「ふゆから、くるる」感想 ~なぜ人が生きたり死んだりするのか?~

まずはSF四季シリーズ完結おめでとうございます!

2012年から発売された「はるまで、くるる」からの9年越しの完結となりますね。

 

このSF四季シリーズ、プレイ当時学生だった私が美少女ゲームにハマるきっかけでもあり、人生観を変えるきっかけになった「仏教哲学」を私に与えた作品です。

とにかく思い出が詰まったシリーズだったので、EDが流れたときに

ああ、遂に終わってしまったんだ」という寂しさを感じ、泣いてしまいました。

そのぐらい影響を与えられましたし、考えさせられたシリーズです。

 

今回は少女しかいない学園での殺人事件を扱った「SFミステリー」となります。

公式のあらすじを読んだときのワクワク感は、四季シリーズの中で「ふゆくる」が一番でした。プレイ後もその期待を裏切らない作品になっていて、とても良かったです。

 

このSF四季シリーズには個人的に大好きなシーンやフレーズがあり、

この「ふゆくる」にもいくつかあります。

まずはそこから語っていきたいと思います。

 

宇宙から見た星は瞬いてない、星が瞬くのは地上からみているから

うわそうなんだ!と声をあげてしまいました。

宇宙衛星とかの観測結果なのでしょうか?SF四季シリーズっぽさが出ていて好きです。

宇宙研究者とかならプロローグの時点で真相に気づいたかもしれませんね。(笑)

 

私たちは誰かの幸せでありますように、という願いの中にいる

このような考え方ができれば、世界中の人々すべてが幸せになれるのではないかと思いました。とても素敵な考え方です。

 

私たちの意識を混ぜて、新しい意識をつくりましょう

ただ子づくりしましょう、という言葉が

すごく本作品らしい表現に生まれ変わっています。天才か??

何食って生きてたらこんな言い回し思いつくのでしょうか。

教えてください渡辺さん。

 

自分は誰かのために、死ぬんだ。だから、受け入れられる

確かにそうかもしれない、と思いました。

私も寿命を迎えて死ぬとき、こんなことを考えるのでしょうか。

 

私たちの情報はどんな形かわからないけど、この宇宙に残る

SF四季シリーズでは、人体は「有機的電子計算機」や「情報の集合体」としており、

唯物論?)このシリーズらしい言い回しです。

今を生きる私たちを力強く肯定してくれる大好きなフレーズです。

 

人間原理について

こんな考え方があったんですね。とても驚きました。

プレイ中にあわててネットで調べました。

こういう知らない知識が学べるからこのシリーズは面白い。

 

殺人事件の真相について

真相は、予備体を使った狂言殺人であり、動機は主人公夕陽に名探偵をさせる為でした。この名探偵をさせるというのは、学園唯一の男である夕陽の試験をするというものでした。

 

ここがちょっと期待していたのと違いました。
SF四季シリーズなら、密室から犯人が4次元空間を通って脱出した、とか

犯人が頭だけ量子化させて消した、とかそれぐらいやると思ってました。(笑)

 

とりあえず、「この世界の秘密がそのまま殺害方法に結びついていて、それが針に関係している」


そういうのだと勝手に期待しており、ちょっと物足りなさを感じてしまいました。

ただ、結局は犯人サイドの目的が

夕陽が言う通り犯人サイドは「話を適当に考えている」ようですので、

これでよかったのでしょう。

 

あと、ミステリーを題材にするなら現場の見取り図ぐらい欲しかった気もします。

 

結末について

最終的には学園の人数は7000人から500人になっており、そこで約束の星(補陀落山)にたどり着く、という描写があります。

そして、彼女らがその星で繁栄し、文明を作っていくのでしょう。

つまり、この物語の終幕が新たな世界の始まりになっている訳です。

これは「はるくる」、「なつくる」と同じですね。世界の終わりと始まりの物語

最後のエピローグは書き足したと渡辺さんは言っていたそうですが、

絶対あったほうが良いですね。とても気持ちいい読了感に浸れます。

 

月角島ヴィカについて

「私たちのいない未来に、何の意味があるの?」

このセリフが出たとき、そうだよ、それなんだよ!と思わずうなずいてしまいました。

私が死んだ後について思うことが、いつもこれだったからです。

ある種の独我論的な考え方。

この答えはきっちりエピローグで答えてくれます。

 

あと、月角島のいう「変わらない美しさ」も否定されるものでないと思います。

どこかわかる気がするしなんか違う気もする、もどかしい気持ちを抱かせてくれる、

このキャラクターがとても好きです。

 

菊間塔子について

ビジュアルと声が大好き!夕陽みたいに壁ドンされたい・・・

あと、あなた一番作中楽そうな役回りでしたね。

 

わからなかったこと

エピグラフの「ア・バオ・ア・クー」について。全く意味がわからなかったです。

ググってもわかりませんでした・・・

 

②OPの歌詞の「......」に当てはまる言葉。これ考察しながらプレイしてたんですけど、最後まで明確な答えがわかりませんでした。

 

誰かわかる人教えて・・・

 

ライター渡辺さんによるメッセージ

 

公式のあらすじには「死ぬって何?生きるって何?何のために命ってあるの?」

とあり、渡辺さんいわくこの作品は、

なぜ人が生きたり死んだりするのか」考えて書いたそうです。

 


問い:なぜ人が生きたり死んだりするのか?

 

この作品の答え:絶え間なく生と死を繰り返し、多様性を得るため。

        未来の新しい意識のため。広がるため。

 

いかがでしょうか。

思えば四季シリーズはすべて生物学がいたるところに散りばめられていました。

そういう意味でとてもSF四季シリーズらしい答えになっていて、私は大好きです。

 

こういう「人はなぜ生きるか?」という究極的な問いに対して

明確なアンサーを出せる人はなかなかいないのでないでしょうか?

私自身、この問いに対してもう何年も考えてきましたが、はっきりとした答えは出せていませんでした。

というか大半の人はそんなこと考えもしない、考えていても自信をもって答えられる人は少ないでしょう。

しかし、本作品は作者なりの答えをストレートにぶつくてくる。

その意味において、この作品の価値がここにあります。

人生の目的は人それぞれだとか、答えから逃げるようなことは言うことはできますが、

作品の中でライターがきっちりと答えを出し、

読者にストレートにぶつけてくれる、本作品が大好きです。

 

最後のアイザック・アシモフエピグラフ

「チェスとは違い、人生ではチェックメイトの後もゲームが続いていく」

という意味だそうです。これは、今生きている私たちが死んでしまっても、

次の世代にバトンタッチし世界は続いていく、という意味だと解釈しました。

私たちがこれから迎える生と死は無駄ではない、と

本作品が肯定してくれたように思います。

 

最後に、この素晴らしい作品を作ってくれた、メーカーとライターの渡辺さんに

 

「幸せでありますように」 そして、「ありがとう!」